お知らせ! 2018年・NPO国際地政学研究所・シンポジウムの紹介

IGIG(NPO国際地政学研究所)は、次の通りシンポジウムを開催致します。

1.日時:2018年12月1日(土)1230開場1300開始1630終了
2.場所:アルカディア市ヶ谷私学会館(JR市ヶ谷駅から靖国方向左徒歩5分圏内―地下鉄駅もございます)
3.テーマ:「武力衝突は回避できるか―『戦わず勝つ』道を探るシミュレーション―」
4.パネリスト:
国際地政学研究所役員―栁澤協二理事長(元防衛研究所長・内閣官房副長官補危機管理担当)
渡邊隆副理事長(元陸自東北方面総監・統幕学校長・PKO派遣隊長)
林吉永理事(元防衛研究所戦史部長・空自幹部候補生学校長/7空団司令/北部航空警戒管制団司令)

5.参加料:一般―1000円/会員・学生―500円
6.締切:11月30日(金)2400時(メール<hayashi@igij.org> 電話 090-2308-7579 )

今回は、参加の皆様と「武力行使の限界」、「抑止機能とその能力」、「シビリアン・コントロール」などご一緒に考える機会を企画いたしました。

「戦わずして勝つ」―決闘志向の時代精神に警鐘―

『防衛白書』(以下『白書』という)は、「わが国防衛の現状と課題およびその取組について広く内外への周知を図り、その理解を得ることを目的として刊行している」(防衛省サイト)。
また『白書』には、国民に、自国の安全保障環境及び防衛力を具体的に知らしめると同時に、国外に向け、「我が国に武力攻撃を仕掛けると、かえって痛い目に遭うぞ」と発信し、日本に対する武力攻撃抑止の一端を担う役割もある。

『2018年度白書』巻頭言(防衛大臣)には、北朝鮮・中国・ロシアの脅威を指摘して、「わが国をとり巻く安全保障環境の中、防衛省・自衛隊がその使命を全うしていくためには、まずは、わが国自身の防衛力を強化し、自らが果たしうる役割の拡大を図る必要があります。現在、この使命を将来にわたって全うすべく防衛計画の大綱の見直しや次期中期防衛力整備計画の検討を進めています」と、自衛隊の行動任務拡大が示唆されている。

他方『外交青書』(以下『青書』という)は、「国際情勢の推移及び日本が行ってきた外交活動の概観を取りまとめたもの」(外務省サイト)と位置付けられている。

しかし、『2018年度青書』の巻頭言(外務大臣)では、冒頭から「緊迫する北朝鮮問題を始めとして、日本を取り巻く安全保障環境は、戦後、最も厳しい状況にあると言っても過言ではありません。また、テロや暴力的過激主義の台頭により、世界の安定と繁栄を支えてきた自由、民主主義、人権や法の支配といった基本的価値に基づく国際秩序が挑戦を受けています。このような中、既存の国際秩序を維持するとともに、国際社会の諸課題に対処していくためには、日本は、各国との連携を図りながら、従来以上に大きな責任と役割を果たさなければなりません」と、積極的な安全保障政策に踏み込んでいる。

『白書』、『青書』ともに、「集団的自衛権行使の容認」(2014年)、武器使用の範囲拡大を示す「関連法制の整備」(2015年)、自衛隊の行動拡大に及ぶ「憲法改正・加筆提起」など、「専守防衛政策」から、安倍政権が転換した「海外に及ぶ積極防衛・安全保障政策」に乗じた「時代精神」が反映されている。そこでは、脅威の対象と名指しした「北朝鮮・中国・ロシア」の「日本の『軍事政策 “Political-Military強化』に対する反発」という「安全保障のディレンマ」の発生が必至だ。
中国の古代戦国期の兵法家であった孫子の『兵法―謀攻篇―』に、「凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るは之に次ぐ」(敵国を保全したまま攻略するのが最善)、「軍を全うするを上とし、軍を破るはこれに次ぐ」(敵を無傷で降伏させるのが最善)、「是の故に、百戦百勝は善なる者に非ざるなり、戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者也」(実際に戦わず敵を屈服させるのが最善)とある。
ところが、今日の社会現象には、「国家間の敵対関係を煽る防衛・安全保障」、「AI戦争の先駆けを予感させる戦闘ゲーム」など、「戦う時代精神」が旺盛である。

『白書』が「武力行使」を前提とする文脈に満ちているのは当然だ。他方、『青書』は、国家関係を波風立てず、出来得れば、自国はもとより関係国の国益にかなうよう、「武力行使を回避できる」最善策を求める文脈で貫く原則があるはずだ。然るに、「武力正面」においても、主権・国益・国民の生命財産を守るに当たって、「百事防衛行動を旨とする」も、敵対関係を高じさせないよう、平時から「戦わずして双方が勝つ」配慮が必要となる。

最善策に求められるのは、多様なシナリオとそのケース・スタディーを重ねることだ。自衛隊は、「戦闘」のシミュレーションに重ね、訓練、演習を通して「勝利」の確信を高めている。その成果が「抑止力」になることは言うまでもないが、「戦わずして勝利する策」は、政治・外交にその多くが委ねられる。総合安全保障の時代にあっては、経済・文化などに、国民の感情を含めた多分野にわたる意識の共有が求められる。

隣国との慰安婦・徴用工・歴史認識問題では、両国々民固有の感情衝突から相互理解への転換など、政治が率先して解決に導くべきところ、むしろ、新たな敵対関係に向かう危惧が勝っている。戦後70年の素晴らしい「平和国家日本」が忘れられ、政治家も国民も国家の命運に係わる根本的かつ繊細な思いに至っていない。平成が幕を閉じようとし、2020年東京オリンピックが新たな時代の象徴となるに違いない時に居る今こそ、「戦わずして双方が勝てる」教訓を顧みたい。

NPO国際地政学研究所 理事 林 吉永