地政学講座(5.6月実施)のご案内

セミナー

2022年の地政学講座(5,6月実施)のご案内です。

第 23 章 WWII 後の世界秩序―冷戦と戦争抑止―

講座㊱2022.5.11(水)1730-2030「WWII 後の国際秩序―勝者の世界(パワーポリティックス)・冷戦―」
新たな戦争の幕開け―東西世界の対峙― 地球規模 1946-1989 冷戦・戦争抑止

抑止は、相互が置かれた距離に関係なく、国力を背景とするパワー・ポリテイックス(威嚇・圧力)の行使によって、他者を圧倒して他者の行動を制御、抑制する現象を言い「権力行使の一変種」であるとも言われます。この現象は、地球を二分した東西対峙の冷戦期、核兵器保有の競争に顕著でした。
1950 年代には、ミサイル/爆撃機/潜水艦などのプラットフォームと呼ばれる運搬技術の開発競争を含め、米ソの間で「核抑止戦略」が謳われ、「使用しない大量破壊・殺りく兵器」が量産、保有されていくという「ジレンマ」に陥っていました。他方で無制限の核兵器競争の歯止めとなる「危機管理の制度化」が必要になったわけですが、抑止のメカニズムでは、核大国間に有効であって、非対称的な関係(非核保有国間)において抑止が機能するか確証はありませんでした。

第 9 節 ポスト冷戦

第 24 章 伝統的戦争の終焉と冷戦後の世界―『新たな地政学』―新たな連邦/連帯国家―

講座㊲2022.5.25(水)1730-2030「国家群の誕生―距離感の短縮―」秩序の再編(新たな国際システム/連邦) ボーダレス 21 世紀 ポスト冷戦


冷戦終焉・東西世界崩壊がもたらした最大のジオポリティークは、EU の成立でした。日本の防衛に「四周環海は自然の防壁」という時代が在りましたが、その時代、大陸に存在する国家は四周を敵の脅威に包囲されていました。
ところが、EU は、従来の四周に国境を接する敵性国家が全て友好国になるという「至高の集団防衛・安全保障体制」の構築に成功したのです。安全保障はもとより、政治・外交・経済などにも新たなジオポリティークが起きています。

第 25 章 新たな戦争

講座㊳2022.6.1(水)1730-2030「大国の支配地放棄―分散・分割・隔離・殲滅の PTSD―」地域再編と非国家主体/連帯 国家破綻地域 21 世紀 ポスト冷戦


冷戦終焉は、東側世界に混乱をもたらしました。冷戦時、東側のイデオロギー体制維持強化のため、多数国、多民族の領域において、反体制勢力抑圧のため、宗教・居住地が体制側政府の力で強制的に分断分散され、ロシアの植民が促され、ソ連のパワー・ポリティックス・シンパの独裁が進みました。
その結果、冷戦終焉、東西対立崩壊、東側国家群の体制消滅にもかかわらず、原状復帰が困難となり、かえって主導権争いや、新旧住民の対立が激化して収拾困難に陥っています。それは植民地宗主国が被植民地を混乱に陥らせた現象と似ています。

第 26 章 ジオポリティーク総括

講座㊴2022.6.8(水)1730-2030「再び、『地政学』ではなく、なぜ『ジオポリティーク』なのか」


戦争の世紀において「地政学」は、「主権・領域・国益」において他を圧倒するため、争いに優位を誇り、最終的に勝(覇)者たるべき戦略を象徴する理論でした。
それらは、「主権国家」、「国民国家」と呼ぶ近代国家の誕生―19 世紀初め、ナポレオンが覇者となったフランスに象徴されますが―以来、カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』、チャールス・ダーウィンの「適者生存・弱肉強食」論、フリードリッヒ・ラッツエルの「生存圏」の主張、ルドルフ・チェーレンの「自給自足・国家有機体」論、アルフレッド・セイヤー・マハンの『海上権力史論』、ハルフォード・マッキンダーの「ハートランド(大陸国家)の脅威 vs クレッセント(海
洋国家)」、ジュリアン・コーベットの「制限戦争論」、カール・ハウスホーファーの「パン・リージョン(地域覇権)」論、リデル=ハートの「間接戦略論」、アドルフ・ヒトラーの『我が闘争』、ニコラス・スパイクマンの「ハートランド vs リムランド」など、優れた戦略理論を生み出した学者たちが、「地政学」という文脈で「覇権」を論じ、これらを総じて「地政学」と称してきました。
日本では、未成熟でしたが、カール・ハウスホーファーの「パン・アジア」を焼き直した「大東亜共栄圏」が謳われ、アジアの覇者たらんと軍事力を行使したのが大東亜戦争です。
ナポレオン戦争に始まる近代国民国家間の戦争は、「伝統的戦争」と呼び、第 1 次、及び、第 2 次世界大戦でその最高潮に達しました。
第 2 次世界大戦直後に始まった冷戦は、「社会主義・全体主義・共産主義」と「自由主義・民主主義・資本主義」を標榜する東西世界の対峙でした。しかし、第 2 次世界大戦の終局に米国が使用した、一度の使用で大量殺戮と破壊を可能とする「原子爆弾(核兵器)の保有」は、米・ソ(露)・英・仏・中・印・パ・北朝鮮・イスラエルに至り、その総保有量は、人類の破滅を招く超十分量に達しています。この恐れは、「核兵器が戦争を抑止する」という皮肉な、「一色触発」の危惧を常続させ、大
国(スーパー・パワー)を極とする軍事的対峙の「冷戦時代」を現出しました。
付言すれば、この冷戦時代は、「地政学」=「覇権論」の昇華が、「新たな『地理学+政治学』の現象 ”Direct Approach” から ”In-Direct Approach”」を導く時代でした。
即ち、「東西世界の構造崩壊=冷戦の終焉」と同時に、西側世界では、「昨日の敵が今日の友」となる「国家群の集合体運営の実験」が始まりました。従前には警戒を要し、牽制の対象であった国が、往来自由の「親戚国家」となる構造が誕生しました。それが “EU” です。四周友好国家の連鎖が成立しました。安全保障上、これほど強力な連帯はありません。
他方、社会主義・共産主義体制の抑圧下にあった東側世界では、民族や宗教の隔離や離間、政治・思想活動の自由の束縛など、「抑圧を目的とした社会的制約からの解放」から「民族主義“Nationalism” 回帰の過激な萌芽」が「実力行使を伴う主導権争い」を伴う混乱を発生させることになりました。それは、第 2 次世界大戦後の「被植民地国家」が「被支配」からの「独立」を目指し一丸になって戦った「民族主義」とは異なり「内紛」の様相が顕著になっています。
冷戦後の旧東側世界に起こった民族主義は、全体主義、あるいは同様の体制下で「強制された社会主義・共産主義の押し付けという旧体制」に対する強烈な反発の顕現です。それは、自由と民主思想の成立を目指した旧体制からの改革であった「諸国民の春」を彷彿とさせ、イスラム教義に縛られた世界での行動は「アラブの春」と呼ばれました。「ポスト・冷戦」の旧東側世界において「民族の再結集」でもある民族意識が高揚した国家の再建は、「覇権」=「地政学」ではなく、「エクメー
ネを取り戻す」ジオポリティークの世界であって、困難の克服に多大なエネルギーと犠牲と時間を要する様相を呈しています。
また他方で、冷戦後の米国は、世界に対して、米国一極の影響力行使を自認していたわけですが、「勢力均衡」や「紛争国家の平和と安定」を調停するために、米国が「米国流の制限戦争」をもって介入を図った行動は、かえって「民主主義の宣教」を映し出し、「民族主義」の反発を招いています。
ちなみに、米国が抜け出せない第 2 次世界大戦後の「日本統治」の成功事例の踏襲は、「所与の国家において培われた島国の穏やかな国民性」があったからこその賜物であることを学習していません。それは、生存のため、四周の脅威との戦いを強いられることが常態であった、大陸に存在する国を相手にする場合と異なります。米国は、介入先における失敗によって、米国自身の「世界の警察官=勢力均衡差配者」の立場を弱め、あるいは、国際社会の信頼を損ねることになり、「トゥキュディデスの罠」に中国を招じ入れる結果をもたらしました。
この現象は、「英国の海洋覇権が米国に禅譲された現象」とは異なります。
中国の「軍事・経済」におけるパワー・ポリティックスの台頭は、「対米」という文脈で新たな「覇権の競合」を生むことになりました。それが、「米中対立」の混沌です。この混沌は、政治・経済においてお互いを相容れない、レジームの全く異なった陣営の対立であった米ソを極とする東西対立=冷戦と異質な「地政学の新たな概念」の創出を示唆しています。従って、「新たな冷戦」と呼ぶことにはジオポリティーク上、悩ましい誤解が生じます。この現象を「可視化」するために、ここで
は、これまでの学習の総括を行い、「地政学」ではなく「ジオポリティーク」としての社会現象を認知していきたいと考えます。

第 27 章 地政学の深化

講座㊵2022.6.22(水)1730-2030「地政学転換の系譜」
古典的地政学の転換―2 次元から 5 次元へ― 異次元世界 21 世紀 仮想・電脳・拡張


RMA は地球上の戦争と社会構造に様々な変革をもたらしてきました。それらは、地表という平面から、水面に至り、長い時間をかけ、鳥の世界である空間を犯して地表から離れた世界を作り出しました。それが 3 次元のジオポリティークです。移動の距離・時間が、まさに飛躍的に延伸・短縮されると、「時間要素」抜きにジオポイティークを語れなくなりました。それが 4 次元のジオポリティークです。
ところが、科学技術の発展は、人類を地球の地表だけではなく、地中、水中、空中そして地球外の宇宙空間にジオポリティークを広げ、さらにコンピューター技術が「時間・距離」の概念を「瞬時」、と「距離感ゼロ」の仮想社会を作るようになりました。これが所謂「電子空間」あるいは「サイバー空間」と言われる世界の出現であり、5 次元ジオポリティークの登場です。
ここでは、このジオポリティークの深化に伴う「人間社会の秩序」が「秩序」の概念に則(のっと)った価値観の共有を提供するための示唆を考えてみます。

第 10 節 進行中のジオポリティーク

第 28 章 ハイパー世界の現実

講座㊶2022.6.29(水)「古典的ハイパー世界の存在―2 大宗教の摩擦―」
キリスト教/イスラム教 全地球規模 0-2021 年/610-2021 年 一神教世界

2 大宗教は、ボーダレスかつグローバル、1 神教のルーツが同一ですが、信仰上の対立を 1500 年余も続けています。顕著な特徴は、キリスト教が国家に採り入れられて来たのに対し、イスラム教が、教義を国の法と同一視する国家を建国していることです。この二つの宗教は、国境、国のレジームを超えて「宗教的な従属関係」を形成しています。この現象が一つの「超国家(ハイパー・ステート)現象」です。もう一つの特徴は、原点において、白人とアラブの民族それぞれを対象に、それぞれ異質な価値観を共有しながら地球上に広く伝播しました。そこでは、当然のように、それぞれが存在する環境において個性を形成しながら、国家間戦争同様の「キリスト教 vs イスラム教」の作用反作用現象を拡大していきます。それぞれの衝突は、宿命的でもありますが、今日的にも相互の排他思想は、国際社会の悩ましく相容れない衝突を絶やしていません。

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IGIJ事務局 林 拝